大会長挨拶
このたび、日本産業保健法学会では、2022年9月17日(土)・18日(日)に、第2回日本産業保健法学会を開催させていただくことになりました。
日本産業保健法学会は、法の知見を基礎としつつ、関係分野の知恵を統合することで、産業保健にかかる不幸な事案を未然に防ぎ、また生じてしまった事案を建設的に解決するため、2020年11月1日に設立されました。
第2回大会となる今大会のメインテーマは、「精神障害の補償・賠償と法/テレワークの産業保健と法」としました。産業保健と法の関係は、職域での精神障害の補償・賠償が拡大したことで、強く意識されるようになりました。テレワークは、新型コロナ禍で拡大しましたが、やはり、私生活とのケジメの難しさによる長時間労働などと共に、不安、孤独などのメンタルな課題が提起されています。精神障害者のテレワークへの復職の可否や条件なども悩ましい課題となっています。
精神障害の労災請求件数は毎年、過去最高を更新していましたが、2019年度の請求件数は2060件(認定件数509件)、2020年度は2051件(認定件数608件)であり、2020年度は2019年に比べ、請求件数が9件少ないにもかかわらず、1年間で労災認定件数が100件増加しています。この背景には、2019年5月には労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメントの定義が明確化され、職場の心理的負荷評価表に「パワーハラスメント」という出来事が2020年6月に新設(類型化)されたことと関係があるように思われます。
個別のセッションでは、精神障害の労災補償、精神障害の職場復帰に伴う訴訟事例、クイーンズランド工科大学のRichard Johnstone教授の招待講演「オーストラリアにおけるデジタルプラットホームに関する安全衛生規制」をはじめ、「テレワーク定着化にむけた健康管理・労務管理上の課題と法」「精神障害者の雇用促進と法ー合理的配慮を中心に」「ストレスチェックの現状と活用」「裁判所による産業ストレスの認定を検証する」等のシンポジウム、また「労働衛生行政の動向」「人的リスク管理学:性格傾向と事例別の対応方針」等の教育講演、日本職業災害医学会等との連携シンポジウム、社労士会連携シンポジウムを企画致しました。法律家をはじめ、精神医療・精神保健・福祉・相談に携わる方々が職域・職種を越えて集い、日頃の産業保健と法に係る最新の成果を発表し、活発な議論を交わせるよう、大会事務局が中心となって、鋭意準備を進めているところでございます。
今大会では、コロナ感染の収束を前提に、対面での大会を切望しておりましたが、コロナ禍の感染リスクを踏まえ、基本はオンラインにて開催することとし、現地開催(全国町村会館)は、認定産業医研修会、関係学問の最前線(性同一性障害治療)、事例検討に限定させて頂くこととなりました。
ぜひ多くの方にご参加頂き、有意義な情報交換の場となることを心より願っております。
日本産業保健法学会第2回学術大会
大会長 黒木 宣夫